2000年8月
パキスタン・カラコルム北西部
      5,659m峰登山・フンザ北西部踏査


主催    甲南山岳会・甲南大学山岳部
隊員    隊長  米山 悦朗   甲南高校 S29卒 横浜国立大学 S33卒
           隊員  雨宮 宏光   甲南大学 S33卒
           隊員  飯田  進     甲南大学 S38卒
           隊員  池内 友宏   甲南大学 4回生


遠征隊速報
イスラマバ−ドの日・パトラベルの督永様に無理を言って、隊の動向をメ−ルで連絡貰っています。
そのメ−ルを青字で掲載してます。赤字の日付は私がこのペ−ジに書き込んだ日です。(塩崎)

2000年 8月7日 月曜日
関西発の、雨宮、池内両隊員は伊丹空港発 8時の全日空ANA
76便にて成田へ、東京組みの、米山、飯田隊員と合流。
成田発 14:00 パキスタン航空 PK 853便にて、出発。
北京経由 イスラマバ−ド 21:00 (現地時間)着。
日本−パキスタンの時差は4時間です。

成田空港に確認した所、出発が2時間遅れ、
16:15に飛び立ったとの事です。
写真は元気に伊丹を飛び立つ、雨宮、池内隊員。

8月8日 火曜日
現地からの報告は何も有りません。
パキスタン航空によると、北京で再び遅れましたが、無事、イスラマバ−ドに到着したとの事です。
ISLAMABAD の天気調べてみました。現地もかなり暑いようです。
  8月8日 火曜日                              9日 水曜日                10日 木曜日
 晴  最低気温 21度−最高 37度         晴  21度−37度         晴時々曇り  22度−30度


8月9日 水曜日
パキスタンより第1報が入りました。日・パトラベルの督永様からのメ−ルです。

SHIOZAKI MASAMIさま

アッサラーム・ア・レイクム!
今年もご利用を頂き、ありがとう存じます。

さて、昨夜のPIA(パハップス・インシャラー・エアライン)は、今朝未明4時頃(7時間遅れ)到着しました。
さすがに皆様お疲れの様子でしたが、苦心して持ち込まれたアルコールは見つからず
税関を潜り抜けたそうです。
ご予定では、早朝の5時半くらいにチラスへ出発でしたが、予定を変更して10時頃
ベシャムへむけて出発されました。
新聞などのニュースでご存知と思いますが、今年は大旱魃で、イルシャッド峠付近にも雪がなく、
登山はミンタカ峠の源頭にある山に変更されるかもしれません。
(速報 @) 督永

8月10日 木曜日
予定では、本日はフンザで休養日です。
パキスタンの日・パより第2報がとどきました。


8月9日、今朝から大雨です。
甲南大学山岳部の皆様と一緒に行く予定のガイドが、お腹をこわし、急遽昨年もガイドさせて頂いた
ナシャッドというガイドが着のみ着のままでハイエースに放り込まれ、フンザへ出発しましたのは
昨朝でした。初めから、皆様とご一緒する予定だったガイドのお腹はまだ治らず、スポーツ・ドリンクの
ボトルを手にゲッソリした顔で事務所にいます。ガイドは不死身でなければならないのに、、、困ったものです。
別のガイドが、夜行便のバスでフンザから帰ってきました。きょうはカラコルム・ハイウエーは
壊れていないようです。皆様も無事フンザへ到着されたことと思います。
トクナガ

日パトラベルの督永さんからのメ−ルが毎日楽しみです。
この調子で報告は入れば面白い読み物になるのですが?
明日以降はトレッキング、なかなか連絡とれなくなりそうです。

8月11日 金曜日
本日は、フンザからアラ−ムダリッジ(標高 3139m)へジ−プで移動の予定です。

パキスタンから速報B
今年は例年より、杏の花が3週間はやく、暑さのピークも3週間はやく、モンスーンに入ったのも3週間
早かったのです。カラコルムの山々は雪で、早々とディラン隊(断念)、群馬ブロード・ピーク隊(登頂)、
山野井泰司K2ソロ(登頂)下山中、K2寺沢隊(断念)下山中と、続々と下山開始です。
モンスーン明けも3週間早いと良いのですが、、、、。
甲南隊のハイポーター、アリ・ムサは今年ブロード・ピークに登頂。ブロード・ピーク隊が車で下山中、
カラコルム・ハイウエーのギルギット近くで、昨日お昼頃、甲南隊と茶店で会い、声を交わしたそうです。
ハイポーターは今日、イスラマに戻り着きましたが、明日朝一にギルギットへむかい、甲南隊を追いかけます。
甲南隊は予定通りフンザへ到着。全員、下痢にもならず、元気とのこと。フンザは雲の多い天気だそうです。

明日からは電話もかからなくなります。
トクナガ


8月12日 土曜日
本日は現地からの報告有りません。今日からいよいよトレッキングです。
標高3,139Mのアラ−ムダリッジから3,450Mのムルクシまでの予定です。

カラコルムハイウェイの事を調べてみました。
カラコルム(Karakorum)
チベット高原とパミ−ル高原の間にあり、北は崑崙(コンロン)山脈、南はヒマラヤ山脈に続く山脈。
七千メ−トル以上の高峰が多く、古来パミ−ルと共に葱嶺(ソウレイ)と称した。
カラコルムは突厥語(誰か何と読むか教えてください)で、カラコルム峠付近に広がる不毛の
荒地をおおう黒い礫のことをさしましたが、後に山脈全体の名前になりました。
カラコルムハイウェイは、7000m峰をバックに、直ぐ近くまで迫ってきている氷河を避けるように、
なめらかなカ−ブを描くき、葱嶺を越えてパキスタンと中国を結ぶ道路。世界の屋根と言われる
険路でありながらも、古くからの主要交通要路で、法顕や玄奘をはじめ、多くの求法僧や隊商が
通ったシルクロ−ドです。
中国パキスタン両国の協力体制によって20年がかりで1978年に完工しました。
パキスタンのイスラマバ−ドから中国・新彊ウイグル自治区のカシュガルまで、全長1,176kmです。
かっては1ヶ月要したパミ−ル越えも、今では1日で越えられるようになりました。

車で行けて、7,000mの山々が間近に見れるようです、山に登る体力に自信の無い私にも行けそうです。
旅行会社のパンフレットを見てますと、歩き無しでイスラマバ−ドから中国のウルムチまでの
ツア−があります。12日間ぐらいのツア−ですが、月曜出発土曜帰国、丸々2週間の休暇が必要です。
暇が出来たらぜひ行ってみたいものです。

 

8月16日 水曜日
現地からの連絡は何も無しです。
1回目のトレッキング、ミンタカ峠を予定通り消化したものと想像してます。
昔大谷探検隊が越した、ミンタカ峠の事は、リンク集で紹介してます、日・パトラベルの
ホ−ムペ−ジに詳しく紹介されてます。御一読ください。

8月17日 木曜日
イスラマバ−ドの今日の天気は、晴一時雨(shower) 最高気温 35度 最低気温 27度
毎日37度−35度の日が続いてます、此れでも今年は例年にない涼しさ、と言う事です。
甲南隊が入っている地域は、14日午後から晴れ始め、しばらく好天が続くとのことです。
甲南隊の動向は連絡ありませんが、
同地域に入山している関学隊はすでに隊員4名、ハイポ−タ−3名が登頂をはたし、
下山中との情報が入りました。甲南隊の朗報が待たれます。
写真はキャラバン中の朝の出発風景です。

8月18日 金曜日
予定では昨日から再びトレッキング、本日は標高3,450mのズイウルトゥから3,800mの
ベスケベンまでの予定です。日・パから久しぶりの連絡です。

パキスタンから速報C
甲南隊は、ミンタカ峠から無事下りてきました。ミンタカ源頭の山は難しいので、
予定通りイルシャッド源頭の山に行かれます。今頃は、チープルサン川が増水しているので、
ジープも渡れないかもしれません。テクテク歩いていることでしょう。

チープルサンというのは、「何をおっしゃっていますか?」という意味です。
ワハン回廊を越えて、そしてパミールを越えてやって来た人達とのコミニュケーションの
第一歩は、「チープルサン」と言う言葉だったのでしょうか?
トクナガ


8月19日 土曜日
米山隊長が昨日(18日)日・パに電話したようですが、何処の村からかけたのか不明です。
おそらくイルシャットのBCに上がる前の、ズイウルトゥかスストからでしょう。
隊員は皆元気にやっているようなので一安心です。

パキスタンから速報D
森首相が21日に来パされるので、このところウチの事務所も殺気立って来ました。
パキスタンの事務所では絶対にありえない残業で、主な者は帰宅が夜8時過ぎ。
通いの若い者も泊り込みになって来ました、、、、、、。
クリントンが来た時も、空港から大統領官邸や、国務省への道筋は2時間ばかり外出禁止令が
しかれたのですが、今回もほぼ同じようです。明日は本番と同じ要領で、予行練習が行われます。
ウチも御一行200人のへの車輌や、TV取材を引き受けていますので予行演習に参加です。

そんなことで、今日は私も珍しく外出。その間に米山さんから電話があったそうです。
”みんな元気でいるので、心配しないように”との伝言でした。
トクナガ


8月22日 火曜日
この所パキスタンから連絡はいりません。
予定では今日BCからACに上がり、明日アタックの予定です。
川の増水でジ−プが使えなければ、1−2日遅れているかもしれません。
去年は、橋田君の高山病で心配させられ、現地との連絡、成田空港での向かえの手配と、
バタバタしました。
連絡のないのは、皆元気に頑張っている証拠、と安心しています。

8月23日  水曜日
遠征隊より絵葉書が来ました。9日に出した air mail が13日掛かって届きました。
掛かった日数でかなりの僻地からの便りと実感します。
我々貿易会社が使う便は、世界の主要都市から1〜2日で配達されます。

山岳会会員各位
8月7日伊丹発(1H遅れ)、成田発PIA(2H遅れ)、北京発PIA(3H遅れ)合計6時間遅れて
イスラマバ−ド、深夜3時20分着。以後車でペエシアム〜フンザ迄2日間。
今年は異常に雪が少なくイルシャット峠近くの山、5,000mあたりまで、下手するともっと上迄雪がないかも。
7月8月の大雨でカラコルム・ハイウェイ途中、土砂崩れの場所多く、以後の道路状況不安。
明日、H2,500mからウルタルB.C.(H3,500m)往復の順応ハイキングします。
予定通り8月12日からキャラバン開始。全員元気です。
8月9日 フンザにて 雨宮宏光


ただ今、フンザ(2,380m)に着きました。明日から徐々に高度に体をならしていく予定です。
ミンタカ峠でいい山があれば計画をねりなおし、アタックをかけるつもりです。
では、元気に行ってきます。
甲南山岳部  池内友宏


8月24日  木曜日
パキスタンから良い知らせが舞い込みました。遠征隊は無事登頂し、すでにスストまで下りている様です。
今後の予定はジ−プ、マイクロバスで峠を越えて中国のカラクリ湖へ向かいます。帰国報告が楽しみです。

パキスタンから速報E
森総理大臣も離パ、ようやく一息を入れようと思いましたら、昨日はK2登山隊、K2とブロード・ピーク登山隊、
スパンティーク登山隊、プパラーッシュ登山隊と4隊も下山して来まして、事務所はまた怒涛のような
ありさまです。小さな事務所ですので座るところもないありさまです。
今、米山さんから電話がありました。スストからかけておられるとは思えないくらい、良く聞こえました。
21日、イルシャッド峠の両側のピークに登頂、日数が余ったので中国に早めに入るとのこと。
中国から帰ってきたら、チラスからは旧シルクロードのバブサル峠を通って帰イスラマバードの予定。
カラコルム・ハイウエーのチラスからダッソーの間に、ダムを造る計画があります。
将来カラコルム・ハイウエーが通れなくなったら、バブサル峠の道がフンザへの道になります。
トクナガ


8月26日  土曜日
遠征隊が楽しんでいるジ−プサファリのコ−スを調べてみました。
スストからパキスタンと中国の国境クンジェラブ峠を越えて中国に入国しカラクリ湖へ。
クンジュラブ峠は標高4,733m、世界の屋根、大パミ−ルの景観が楽しめ、雪を頂く峯々の中を走ります。
羊を追うタジク族、草をはむヤク、点在するパオが見る事が出来るそうです。
カラクリ湖は神秘の湖と呼ばれ、氷山の父と呼ばれるムスタ−グ・アタ峰(H7,546m)と
コング−ル峰(H7,719m)の間にあり、両巨峰を湖面にうつし、純白の山と蒼い湖面とのコントラストは
まさに圧巻!! とガイドブックにあります。

8月27日  日曜日
パキスタンから速報F
アッサラーム・ア・レイクム!
ここ2日ばかり蒸し暑いイスラマバードです。そろそろモンスーン明けの大雨になりそうです、、、、。

甲南隊のコックが大荷物と一緒に、一足早くイスラマバードへ帰ってきました。
みなさま体調もこわさず元気におられたようです。
8月26日 トクナガ


8月28日  月曜日
遠征隊はジ−プ・サファリを元気に続けているものと、想像してます。
ひょっとすると来年の目標を探し求めて、さまよっているのかも。
私もパキスタンに行く機会が有るやもしれません。現地の言葉を調べました。
アッサラーム・ア・レイクム!(神の御恵みがありますように)
ワーレイクム・ア・サラーム!(あなたにも神の御恵みがありますように)

8月31日  木曜日
久しぶりにパキスタンから便りがありました、皆元気でやっているようです。
カラコルム、一度行ってみたいと思いますが、禁酒の国、酒大好き人間の私は考えてしまいます。

パキスタンから速報G
イルシャッドの登山が予定より早く終わり、自力で中国のカラクリ湖を往復されて来ました皆様は、
ギルギットより(鬼が出る)バブサル峠を越えて、昨夕無事カガーン渓谷のナラーンへ到着されました。

「お願いがあるンですが、、、、。1日のお昼くらいにイスラマバードに帰り着きますので、
ビールを12本とウィスキーを用意しておいて下さい。と、飯田からの伝言です」
米山隊長からの電話でしたが、わざわざ、飯田さんと言うところが、隊長の律義なところなンでしょうか。
何日間かの休肝日を過ごされた皆様を、パキスタン製のビールが待っております。

禁酒国パキスタンにもかかわらず、外国人や非イスラーム教徒のためには、ビール会社があって、
ウィスキーも造っています。トクナガは一滴も飲めませんので、味は分かりませんが、
皆の話によりますと、ウィスキーは不味いが、ビールはフルーティだとか。
かの、パキスタンの第一人者を自称されていた、広島三朗氏はパキスタンビールの愛飲者でした。
なお、今年の夏から、パキスタンでも缶ビールが発売です。
トクナガ


9月1日  金曜日
米山隊長からメ−ルが入りました。登山本部を仰せつかった私も、此れで一安心です。

やっとイスラマバードに戻ってきました。取り合えず無事戻ったことを報告します。
旅の最後はカラコルムハイウエーができるまでのルートであったバブサーロ峠を越えて戻りましたが
悪路をジープでがたがたいわされてグロッキーになりました。結局パキスタン国内ではミンタカ峠を
出発点に昔のシルクロードをとおってイスラマバードまで戻ったことになります。 
昔の人は苦労したことが良く分かります。
米山


9月3日  日曜日
米山隊長からのメ−ルです。 おそらく此れがパキスタンからの最後の便りになると思います。

以下簡単に総括しておきます。

ーミンタカ峠ー
さすがにかってのメインルートだけあって峠の上まで約2b程のラクダガとおれる道路がかっては
整備されていたらしくその跡が所々のこり草むしているところは"夏草やーー”を思わせます。
峠の頂上までパキスタン側は急な坂を2時間ほど登って頂上ですが中国側は広大な谷が広がり
パミール高原がはじままります。  大谷探検隊がヤクに乗り高山病に悩まされながらここを越えたのも
最もと思われます。  高度順応が上手く行き比較的楽な旅でした。

ーイルシャッド峠ー
名前が間違っておりイルシャッドは隣の峠で今回目的とした峠はキルギス峠でした。途中不安定な
天気に悩まされ雨と曇りと晴れが交互に訪れ寒い思いをしました。
たまたまACを出す日が晴れていたので一気に1200bを登り向かって左方の雪の付いたピーク
5、250bに米山・池内がハイポーターに連れられてアタックし約40度の急な斜面にフィックスを張り
その後クレパスを幾つか渡りピークに着きました。同時に雨宮・飯田は向かって右方の岩のピーク
5、185bにハイポーターをつれてアタックし頂上を極めました。その後ACに一泊翌朝は雪が
一面をおおい早々にBCに戻りました。土地の人の話ではどちらのピークも頂上に登るような
物好きはおらず頂上までいったのはオマエ達がはじめてだろうとのことでした。

ーもう一つハードトレッキングー
正直なところ今回はポーターの稼動距離との関係と高度順応も兼ねてユックリしたスケジュールで
一気にピークに行ってしまったこともあり欲求不満というか余り達成感がないといったところあり
もう一発ハードなことやりたいとゆうことになり、雨宮・飯田には一息いれてもらって米山と池内が
フンザをでてウルタールベースキャンプを通りホームパス4、200bまで高度差1700bを一気に
3時間で登ってきました。

ーバブサーロ峠ー
やはり昔のシルクロードとは言えひどいオフロードをジープで揺られてきました。途中村人が
手に手に銃を持っており治安の悪いところだそうで人相の悪い連中が一杯いました。
途中イギリス人らしいのが10人くらいマウントバイクにのってジープ2台を伴走させて走ってゆきました。

以上・米山


9月5日  火曜日
遠征隊は昨日、全員元気に帰ってきました。
此れで登山本部の役目も無事終了です。
長らく御愛読頂きました遠征隊速報も今日をもって終了します。
塩崎

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