4 クリス・ボニントン著・田口二郎・中村輝子訳『現代の冒険』
(上)−山・極地・河−/(下)−海・空・洞窟・宇宙−
岩波書店(1987/1988) 定価各2800円
訳者田口二郎(1913−1998)は旧制甲南高校昭和8年卒後東京大学に進学。戦前、戦中欧
州アルプスに兄一郎、高木正孝らと共に初登攀を含む多くの足跡を残した。戦後はマナスル
踏査隊(1952)及び第一次遠征隊(1953)に参加。元日本山岳会副会長。本書の訳出では、
上巻の巻頭および−山−の部分を分担している。
原著(Chris Bonington “Quest
for Adventure” Hodder & Stoughton, London, 1981)の著者クリス・
ボニントンは英国を代表する登山家、冒険家にして著述家。1970年のアンナプルナ南壁の初登
攀によりヒマラヤ大登攀時代の幕を明け、その後も1975年には英国隊を率いてエヴェレスト南
西壁の初登攀に成功させるなど、ヒマラヤ「壁」の時代をリードした。本著は彼とほぼ世代を
同じくする第2次大戦後の冒険家達の栄光と挫折の軌跡を、自らも同時代に冒険の現場を何度
も経験した人間として論考したもので、英国で発刊直後10週間ベストセラーとなった。
アンナプルナ、そしてエヴェレストの初登頂に始まり、ワルテル・ボナッティー、ヘルマン・
ブールらと共に、植村直己にも一章を割いている。