10 サブリエ・テンバーケン著・平井吉夫訳『わが道はチベットに通ず』−盲目のドイツ人
女子学生とラサの子供たち− 風雲社(2001) 定価1800円
訳者平井吉夫(1937− )は昭和32年甲南高校卒。
早稲田大学文学部卒。ドイツ語翻訳家、ドイツ語通俗小
説(この表現は好きではないが、本人がいうので)の邦
訳家として第一人者。訳書多数。中学・高校時代は山岳
部員として活躍し、国体山岳部門の兵庫県代表に選ばれ
たこともある。 甲南の英語の教師が嫌いで英語嫌いと
なり、ドイツ語で名を成したのだから、英語の教師に先
見の眼があったのかも。
原著; Sabriye Tenberkenn, “Mein Weg fuehrt nach Tibet.
Die blinden von Lhasa”, Yerlag Kiepen & Witsch, Koeln (2000)
若き全盲の著者テンバーゲン(1970年生。ドイツ・
ボン出身。中央アジア学専攻)の驚くべき行動力による、
失明者の多いチベット・ラサでの盲学校の設立に至る物語
である。チベット語の点字作りから始まり、ドイツ政府の
助成を取り付ける気の遠くなるような試練の道のりが描か
れている。著者の旅の描写も興味深い。
本書はドイツ国内でベストセラー入りし、数カ国語に翻
訳され、映画化の予定もあるという。訳者あとがきに施設
とプロジェクトのその後などが適切に解説されている。
(追記) 生徒との交流を追い、彼らがヒマラヤ登山に挑戦するドキュメンタリーが
2006年に英国で映画化され、2007年に日本で公開された。
盲人として史上初めてエヴェレスト登頂に成功した米国人エリック・ヴァイエンマイヤーに
感銘を受けた著者と盲学校の子供たちが、彼を学校に招待し、これがきっかけで
子供たちが7018mのラクパ・リ登頂に挑戦する物語。
映画原題:Blindside
邦題:『ブラインドサイド〜小さな登山者たち〜』
監督:ルーシー・ウォーカー
訳者は試写会出席のため初来日した著者と会談している。
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