15 平井一正著 『わが登山人生』 私家版 (2010年)
著者平井一正氏については別掲7 を参照のこと。前著「初登頂」が神戸大学定年
退官直後の出版であり、本著は喜寿を過ぎ80歳になろうとしての出版である。
ヒマラヤ登山史に輝くチョゴリザ初登頂(1958年、26歳)に始まり、サルトロカンリ、
シェルカンピ、クーラカンリ、チュルー、ルオニー(2003年、71歳)と続く著者の今や
古典的正統派ともいえるヒマラヤ遍歴が、登山家としての生い立ちとともに語られる。
初登頂、未踏の山々にかけられた情熱と、教育・研究との間での葛藤がひしひしと読み
取れる。日本山岳会の月報「山」(2010年12月号)に平井吉夫が書いた図書紹介の一部を
引用しておく。
―登山家と学究という「二足のわらじ」をみごとに履きこなした著者の人生が、「まさに息つ
くひまもないと言ってよいほど、波乱万丈であった」のは、いずれの「わらじ」もおろそかに
履かぬという意地と心意気のなせるわざであった。それはもうダンディズムと評してもよいであろう。―
近年の甲南の仲間との辺境の旅と登山、スワート・ヒンズークシの山旅(1999年)、
チベットの未知の山―ブーチャカンリ偵察行(2002年)も収録されている。また山を通じた
心温まる人脈の広がりは著者ならではのこと。
教育者としての国際交流への尽力も、我らが母校甲南大学理工学部に留学生いじめの
とんでもない中国人教授が居たなどという内輪話とともに語られ興味深い。